やっぱり、好きだ。

 
 「な・・・んでもないです。私、1回保健室戻りますね。生徒が心配なので」

 一生懸命に髪で顔を隠しながら、青山くんから顔を背けると

 「そっか。俺はここでアイツら来るまで昼寝でもしてるわ」

 青山くんは近くの席に腰をかけると机に突っ伏した。

 「失礼しますね。おやすみなさい」

 うつ伏せになった青山くんに声を掛け、資料室を出ようとドアに手を掛けた時、

  「その生徒も『サヤ子が保健室の先生で良かった』って思ってるよ。絶対」

  青山くんの声に振り向くと、寝ようとしていたはずの青山くんが、私の方を見ていた。

 ・・・そうだろうか。

 「・・・私、何もしてないじゃないですか。何も出来てないじゃないですか。青山先生と青山先生の教え子さんたちに頼っただけですか。今保健室にいる生徒の子、私を挟まずに青山先生に直接相談していたら、もっと迅速に対処してもらえたのに・・・。私はただの役立たずです」

 自分のふがいなさが嫌になる。情けない。

「サヤ子だから相談出来たんじゃん?? サヤ子って、何でも聞いてくれそうなオーラ出てるし」

 分かり易く落ち込む私に、青山くんがよく分からないフォローを入れた。

 まずどんなオーラか分からないし、そんなオーラが出ているなんて、今まで誰からも言われた事がない。

 「・・・ちょっとよく分からないのですが、お気遣いありがとうございます。・・・また後ほど」

 勝手に褒め言葉と受け取り、青山くんにお礼を言うと、

 「いってらしゃい」

 青山くんは、ひらひらと手のひらを左右に振ると、また机に頭を乗せ、目を閉じた。

 静かに扉を開け、今度こそ資料室を出た。