「タオル、濡らしてきますね」

 水道に行こうとすると、青山くんが私の手首を掴んだ。

 「いいよ。サヤ子の手、冷たいから暫くのせてて」

 青山くんが、掴んだ私の手をそのまま自分のおでこの上にのせた。

 青山くんが『冷たいから』と言っておでこにのせた手が、みるみる熱くなる。なんなら手汗も出てきそうなほどだ。

 「・・・昔の事、ほじくり返すのもどうかと思うけど、私のした事は本当に最低な事だけど、青山くん、普通に平気でこういう事するんだもん。そりゃ、勘違いだってしてもしょうがないよ。ストーカーされる原因は青山くんにもあったと思う。・・・て自分のした事、今更正当化したくなってしまう」

 意識しない様に平常心を保たせながら言い捨てて、青山くんのおでこから手を退かすと、タオルを濡らしにその場を離れた。

 「ばかサヤ子。・・・俺が1番バカだけど」

 青山くんの声に振り向くも、青山くんは私に背を向ける様に布団に包まっていた。

 結局青山くんは、そのまま5時間目が終わるまで眠った。