やっぱり、好きだ。

 
 「あ、また逃げたなって思ったでしょ、今。H大はK大目指す前の私の第一志望だったの。行ってみたくて前から希望出してたの」

 俺の頭の中を見透かしたサヤ子が笑う。

 「・・・K大来た事、後悔してる??」 

 高校の頃、クラス替えの時、『サヤ子と同じクラスになりたい』と願った。 サヤ子と同じ大学に通いたくて必死に勉強した。それくらい、サヤ子の事が好きだったのに・・・。

 俺が、サヤ子の大学生活を辛いものにしてしまった。

 もしも、俺がK大を無理矢理受験させなかったら、サヤ子はもっとずっと楽しい大学生活を送れていただろう。

 どうして時計の針は戻せないのだろう。せめて、サヤ子の時間だけでも巻き戻せたら・・・。心の中で、どうにもなるはずのない願い事をする俺に

 「ぜーんぜん。正直、留学しようと思ってた頃は後悔もあったんだけど、留学、すごく楽しかったの。もし、H大で何事もなく過ごしていたら、留学しようとは思わなかったと思うのね。それに、あんなに勉強したんだし、入れて本当に良かった。・・・青山くんには、嫌な思いさせてしまって申し訳なかったとは思ってるんだど・・・本当にごめんなさい」

 サヤ子は俺の様な馬鹿げた現実逃避を計ろうとはせず、恨み辛みをぶつけたりもしなかった。

 『K大に入れて良かった』というサヤ子の言葉は、本心ではないのかもしれない。俺に気を遣わせない為の優しさなのかもしれない。でも、本心であって欲しいと思った。