「・・・待つ・・・けど・・・手は繋いでもいい??」
サヤ子の返事を待たずに、サヤ子の指の間に自分の指を絡める。手だけでも触れていたい。
「翔太・・・恥ずかしい。・・・もう、何もかもが恥ずかしい。今更名前で呼ぶとか恥ずかしい。手・・・とか、すっごい汗出てきたし。もう、どうしたらいいか分かんない!!」
なんだかんだ調子を取り戻してきたサヤ子。
照れるサヤ子はやっぱり面白い。照れてなくても面白いけど。
「何か食いに行かない?? 俺、腹減った。久々に走ったし」
繋いだ手を引っ張ると、
「うん」
サヤ子が握り返してくれた。
手繋いだの、いつぶりだろ。
この歳になると、女と手を繋ぐなんて事なくなってたけど、手って、繋ぐだけでなんか楽しい気持ちになるもんだったんだな。・・・とか、考えていた帰り道。
隣のサヤ子はと言うと、
「安田を呼ぶノリで『翔太』って言っちゃえばいいのか!! 文字数一緒だし。なんか私、イケるかも!!」
などと『ナイジェ』を彷彿とさせる独り言を連発していた。
うん。やっぱり俺は、サヤ子が大好きだ。



