「誤解解けたんじゃないの?? 高校の時付き合ってたでしょ?? 俺ら」
「10年前じゃん」
「サヤ子、変わってないじゃん」
「変わったよ」
何故かムキになり始めるサヤ子。
「サヤ子は『こけしナイジェ』のまんまだよ」
俺の言葉にサヤ子の右眉が『ピクッ』と動いた。
「こけしじゃないよ!! 今なんて前髪のばして斜めに流してみたりしてるもん。こういう前髪、看護師の時は出来なかったんだよね。ピンで留めるか切るかしなきゃだったから」
ヤバイ。サヤ子、話が脱線し始めている。
「サヤ子、ゴメンだけど今サヤ子の前髪事情とかどうでもいいかも」
話を戻そうとするも、
「青山くんが『こけし』って言い出したんじゃん」
話が逸れている事に気付かないサヤ子は、そのまま話し続ける。
「『青山くん』じゃなくて『翔太』」
どうでもいいけど、付き合ったなら名前呼びして欲しい。



