やっぱり、好きだ。

 
 「で、どうにかしてサヤ子と喋りたくて、理由付けて放課後の進路相談の順番、サヤ子の次にしてもらってさ、サヤ子が俺を呼びに来る一瞬の2人だけの時間に賭けたよね」

 「頑張ったねー、青山少年」

 安田が『よしよし』と俺の頭を撫でた。

 「イヤ、青山少年の頑張りはこっからだから」

  自分の頭の上にあった安田の手を止めると『それでそれで??』と食いつく安田。

 「サヤ子の志望大学を聞き出そうとして失敗して・・・そうこうしてたら担任が呼びに来て、サヤ子は帰ろうとするしで・・・でも、このチャンスは逃せねぇと思って、担任に『高村は俺と同じ大学に行く』って言って無理矢理サヤ子の志望校変えさせて・・・」

 「強引極まりないな」

 「『なんで??』って戸惑うサヤ子に『完全に勢い余った』とも言えずに『サヤ子だったら絶対夢叶えると思ったから、俺も頑張ろうって思えるから』ってカンジの臭い上にわけ分からんセリフぶっ放して…」

  「くっさ。 激臭。 目にくる」

  安田が目頭を抑えた。

 「でも、サヤ子は顔真っ赤にして喜んでたし。 だから、サヤ子は俺が毎日サヤ子達の会話を盗み聞きしてサヤ子を好きになったとは思ってなくて、『夢を追うサヤ子の姿』を好きになったと思ってたんじゃねぇかな」

 「なんか、サヤ子センセが残念。高校の時は浮気しなかったんだ??」

 「リブ、女子ボクシング部だったし」

 『フッ』安田は『リブ』でもウケるらしい。

 「ナルホド。しっかし、何故そのガッツを大学でも発揮しなかったかねぇ」

 安田の言葉、耳が痛い。反射的に耳を覆う。

 「塞ぐな塞ぐな、耳!!」

 安田が俺の両手を耳から引き剥がした。