やっぱり、好きだ。

 


 サヤ子と別れてから、サヤ子と話す事がなくなった以外に生活に大きな変化はなかったけれど、唯一変わった事がひとつ。最近、森田と一緒に同じ塾で講師のバイトを始めた。森田は中学・高校の英語を、俺は同じく中学・高校の数学を担当している。

 

 「あー。疲れた」

 バイトを終え、休憩室一息つく俺の隣で森田がコキコキと首を鳴らせた。

 「腹減ったー。肉まん買って帰ろうぜ」

 何だかんだ真面目にバイトをしている為、働いた後はいつも空腹。腹を摩りながらお疲れ気味の森田をコンビニに誘うと、

 「だな」

 と森田が重い腰を上げた。

 肉まんを求め、2人で近くのコンビニに入ると、

 「あれ、サヤちゃんじゃん??」

 森田がお茶を選んでいるサヤ子を見つけた。

 「サヤ子」

  思わず話掛けようとする俺の腕を森田が掴んだ。

 「翔太とサヤちゃんが一緒にいるところを大学のヤツらに見られたりしたら、またサヤちゃんが翔太のストーカー扱いされるじゃん」

 俺がサヤ子にした仕打ちを知っている森田が、サヤ子に近づこうとする俺を制止した。

 『反省してるなら、サヤちゃんにとってマイナスになる様な事は二度とするな』と念を押されていた為、足を止めるしかなかった。