「森田くんとはキスしませんよ」
「なんで??」
「仮にそんな事をしたら悲しむ女の子がいるからです。森田くんの事を好きな子、たくさんいたじゃないですか」
全く納得の出来ないサヤ子の言い分に溜息が出た。わざと出したのかもしれない。
「安田としたって悲しむ女はいるだろうよ。安田、かなりイケメンだしモテるじゃん。安田を好きなヤツだっていっぱいいるだろ」
キレながら、謎にうっかり安田を褒めてしまう始末。
俺の思いもよらない褒め言葉にビックリした安田が、目を丸くしてこっちを見た。が、構わず怒り散らす。
「それに、俺が色んな女と遊んでる時に、千佳が悲しんでたってサヤ子言ってたよな?? ・・・俺の気持ちが分かったとか、なんなの?? 全然分かんねぇだろ?? 自分のした事を正当化したいからって、それらしい理由くっつけんなよ」
「ご・・・めんなさ・・い」
俺のブチギレ加減に、涙目で謝るサヤ子。安田は未だに半笑い。イヤ、苦笑いかも。
「サヤ子センセー、お腹空いた。保健室に隠し持ってるお菓子持ってきてー」
安田がそんなサヤ子を逃がしてやろうとした。
「でも・・・」
「腹減りすぎて死ぬ。はーやーくー」
安田は戸惑うサヤ子の背中を押すと、放送室のドアまで追いやり、半ば無理矢理放送室から押し出した。



