「・・・それ言いに引き返してきたの?? 大丈夫だよ。教え子の親が経営してる居酒屋だから、バレないバレない。それに、俺がいる間は飲ませないから。まぁ、俺が帰った後の事は好きにしろって感じだけど。俺に責任及ばないし」

  心配して険しい顔になっているだろう私の頭を、青山くんが優しく撫でた。

「そうなんですか。すみません。余計な忠告してしまいました。引き止めてしまってすみませんでした」

 自分のお節介を詫びながら、そそくさと帰ってしまおうとペダルに足を置くと、

「さっき、安田がエクレア半分こしてサヤ子と食おうとしてたの邪魔しちゃった。ごめん」

 青山くんが、紙袋の中からエクレアを1つ取ると、『あげる』と自転車のかごに入れた。

 「逆に1個丸ごと貰えてラッキーです。引き返して良かった」

 かごの中のおいしそうなエクレアに、思わず頬が緩む。私も安田に負けず劣らずのスイーツ女子なのだ。

「貰えてって・・・元々サヤ子が買ったんじゃん」

 青山くんが、涎でも垂らしてしまいそうな私を見て苦笑いした。