「 …覚えてないなあ…
それに、今日この町にいたからって
明日もいるわけじゃないかもしれない
――― 力になれなくて悪いね 」
よくコーヒーを飲みに行く喫茶店
そこのマスターにまで、そう言われた
―――… 確かに、そうなんだ ―――
この喫茶店が入ったビル
架けられた、たくさんの看板
余程の老舗以外、数年後には
違う看板になっている事はザラで
同じ場所でも、中身が違うのだ
こうやって住み慣れた風に
街を動いてはいるけど
結局は、いつも通り慣れた道や
店を選んでいる自分に気付く
その実
私はこの街の事を、何も知らない ――
あの時期、活気だっていたのは
電子の海ばかりで
流行っている事も、空虚な
どこか頽廃的な物
かと思えば、
"いつもクラスの片隅で
一人静かに笑っている"
そんなイメージである人達が
突如、道に溢れ出し
集団で曲に合わせて踊ったり ―――


