それがどういうことなのか
彼自身もわかっていた
彼の仕事は
寿命を迎えた人を迎えに行くこと
ましてや
死ぬ予定のない人の
命を奪うなど
あってはならないことだった
「早く、僕を、殺してよ」
彼は背後の存在に言う
「…なぜお前は…こんなことを」
問うた彼の背中にもまた
黒い翼
「…好きなんだ」
「…そうか…
…掟に背いたものは
…消さなくてはならない…これも、お前の
望み通り…だったか。」
「…ごめんね辛いよね
僕は…大丈夫だからさ
ほら早く。」
大きな黒い影は
少年めがけて鎌を降り下ろす
その刃は
翼を斬り、肉を切る
少年の瞳はそれでも笑って
腕のなかの彼女と共に
地面に崩れ落ちた



