「おや、これはこれは・・・偶然ですね。」
殴りたい。
微笑を浮かべたそいつを前に、思わず握りしめた拳をさっと背後へ隠した。
「これはこれは、御機嫌よう魔術士殿。」
にこやかに挨拶するが、内心私の苛々はそろそろ頂点に達しそうだ。
「アリアは王子と面会中ですか。お暇ですか?」
「どういう意図があって私などの暇を聞くかは皆目検討もつきませんが全くもって暇ではございません。
お引取り願えますか?魔術士殿。」
「王子もそうそうアリアに無礼を働くようなことはしませんよ。
安心してその扉から身を離してください。」
聖女は、この国で絶対的な権力を持っている。
王位ですらそうそう手を出すことは出来ないだろう。
けど。
けども、あの王子なにか企んでやがるが、中々頭が回るのか尻尾をつかめない。
見かけ無害な風貌をして、策士なのだ、あの男は。
「本当にアリアの事しか頭にないよねぇ守護騎士殿は。」
「守護騎士は聖女のためにあるのだから、当たり前でしょう。」
「それはそうだけど、君ってば異常だよ。本当に洗脳とかされてない?」