「君はさ、アリアアリアってそればっかりだね。」
「悪いですか。」
「全然?でもそれは君の意志かな?」
「わたしのです。」
中庭への道中、唐突に魔術師がオカシなことを言い始めた。
いや、コイツがおかしいのはいつものことだけれど・・・。
「歴代の守護騎士は突然、そして当然のように聖女の隣にいるんだ。」
「・・・。」
「そして結構な歴史の中で、守護騎士が聖女を裏切ったことは一度もない・・・逆はあるのにね。」
だからなんだ。
意味深な視線を投げかけるな。聖女サマがいつかわたしを切り捨てるとでも言いたいんだろうか、この魔術師は。
「それで、わたしが気がつかないうちに精神に作用する魔術をかけられて、無いはずの忠誠心を無理やり植えつけられたとでも言いたいんですか?」
「えー、そんなこと言ってないよー。だってそんなこと言ったら、僕の首が飛びかねないじゃないか。」
そう考えるよう仕向けたのは自分のくせに、白々しい。
目的の中庭への出入り口について、今度こそ中に人がいるのを確認し扉を開けた。
薔薇の咲き誇る庭で紅茶を飲んでいるのは実に様になる聖女様がいた。
聖女サマはわたしに気がつくと、嬉しそうに顔をほころばせ手招きをする。
(可愛いなぁ。)
頬が緩むのも仕方がない。
魔術師はそんなわたしの様子を見て、意外そうに数度目を瞬かせた。
次いで、口元だけ笑みの形を作って小さく呟いた。
「・・・妬けちゃうなぁ。」
冗談はその性格だけにして欲しい。
その発言の気味の悪さに耐えかねず、早歩きで聖女サマへと歩み寄った。