「守護騎士。」

「・・・うーゎ、なんでしょうか偉大な魔術師殿。」


 うーゎうわ嫌なやつに会っちゃったよ。
聖女サマの異常なまでの祝福と言う名の力や、異世界から来たわたしに興味津々の嫌な奴。


 いつも観察するように見てくるのが気に食わない。
珍獣扱いが気に食わない。
なにかと詮索してくるのが気に食わない。
とにかく、気に食わない。


「僕の名前はシュリだと言ったでしょう?」

「そーでしたねー、魔術師殿。」

 人畜無害な笑顔を浮かべるが、実際こいつはそんな温い奴じゃない。

言ってしまえば知識欲狂だ。
知りたいものはどんな手を使ってでも知るし、逆に興味のないものにはとことん興味がない。

 ちなみに異世界から召喚されたという事実は、聖女サマと生真面目騎士しか知らない。
なのにコイツはわたしを見て、異物だと気がついた。
浮いて見えるのだそうだ、この世界から。

 浮世離れといえば聞こえはいいが、馴染めていないとは嫌な話だ。

というか、浮世離れといえばまさにこの男の容姿だ。
星色の髪に深海の紺碧の瞳、整った顔立ちだが天は二物を与えずというの本当だったらしい。


「アリアのところへ行く途中かな?」

「そーですよー。」

「僕もアリアに用があるんだ、一緒に行こうね。」

「さようなら。」


 正直に言うと、一分一秒でも長く一緒にいたくない。
生真面目騎士のところに行こう。

ヤツはわたしの事をあまり好いてはいないが、本気で嫌がっている様を見ては庇ってしまう正真正銘の苦労にn・・・お人好しなんだから。

 さっさか歩くがリーチの違いか余裕でついてくる。


「そうだ、美味しい茶葉を手に入れたのですがご一緒にどうかな?」


「ご遠慮いたします。崇高な魔術師殿と茶の席に同席するなど恐れ多いですからネ。」


 ちょうどここ僕の部屋の前なんですよと不吉な事を言うヤツに蹴りを入れたい。
だがここでそんなことをしでかしたら後でどうなるかわからないので却下。
一時の情に流されて一生を不意にするのは遠慮願いたい。


「あ、ついたね。」


 あぁやっとか。
そんなに遠くないはずの道のりが嫌に遠く感じたのは隣にいるヤツのせいだ。

 ガチャリとドアを開けても、誰もいなかった。


「・・・・・。」


「あぁ、そういえば君に伝言頼まれてたんだった。」


「・・・。」


「アリアが、中庭でお茶会しようだって。」


 とりあえず殴っておこうかと思ったけど、後々面倒なことになるのでやめた。
とりあえず聖女サマのいる中庭は反対方向なのでその方向へ足を向けた。

 苛々とどうしようもない衝動が湧き上がるが、どうしようもない。