「じゃあな。」
と手をポケットに突っ込んだまま背を向ける長谷川くんの横に可愛らしく頭を下げるゆりちゃんが駆け寄り、彼の制服の裾をちょんっと掴む。
男の子には好評かもしれないそんな仕草を、今時する女子がいるのかと目を疑うけれど、でもそれはゆりちゃんにだけ許されている彼女としての特権で、正直見ていられない。
なのに、私の目は意思とは無関係に彼の後姿を追いかける。
やがて公園から二つの影が完全になくなるまで、名残惜しそうに見つめ続ける私…と義人。
そう。
私たちは二人の姿が見えなくなるまで会話も交わさず、視線も合わさず、ただそのまま、見送ったまま佇んでいた。
義人……もしかして…。
