どうして好きなんだろう


「面倒回避が勝ち。」

そういって笑った目の端に、1限目の数学の先生が教室に入ってくるのが見える。

長谷川なんとかくんを潔く諦めた私に黒板に向き直りながらもチッと舌打ちする真尋。

ほらやっぱり面白がってた。

その手には乗りませんよ~っと真尋の背中に舌を出す。


名前もちゃんと知らない、無愛想に対応されただけの人。

そんな他人というカテゴリの人に、信じてもらえたことは純粋に嬉しかったから。

だから気になっているだけで、興味を持っているわけではない。

1限目から数学なんてほんと頭働かないけど、一応受験生でもある身で、無理矢理意識を手元の教科書に集中させる。