どうして好きなんだろう


「直…おかえり。…あと、ありがとう。」

うまく笑えてるかわからないけれど、感じるその手の感触に夢じゃないんだと嬉しくなる。

直の事を思い出す度に繰り返していた言葉を伝える。

瞬間、その手に力が込められて、私の体はすっぽりと直の両腕に包まれる。

「…理央の全部が忘れられない。いつも、理央のこと思い出してた。」

耳元でわずかに掠れるその声は、フワフワした心地よさと焦げ付くような情欲を煽る。

「私も…いつも直のこと考えていたよ。…声が聞きたかった、この腕に包まれたかった…。」

「……忘れようと努力したんだよ、必死で。ムリして、遊んで、騒いで…雨の中で洗い流せるならって、ずっと外でいたことだって1度や2度じゃない。」

その言葉で思い出す、あの日の湿度と体温。

張り付く前髪と落ちる雫、冷たい指先が触れた唇、震える心…。


そんな想いで直があの日、あの場所でいたなんて、想像もしてなかった私は何を言った…?