ゆっくり歩を進めるにつれて、その団体の真ん中で門に背中をあずけたまま曖昧に頷いている長身が目に入ってくる。
忘れるはずがないその横顔を確認しただけで、最近は思い出しても流してはなかった涙が容易に溢れ出て視界を揺らす。
「……っ、なんで…?」
震える声で呟いたそれを、絶対に聞き取れない距離にいるのに、その人がふっと視線を上げる。
「…理央。」
それだけで、もう私は1歩も前には進めなくて、流れる涙を拭うこともできずにただ立ち尽くす。
毎日毎日考えすぎて白昼夢でも見ちゃったのかとか、他人の空似かもとか、そんなことが脳裏に浮かぶけれど。
それでも、どれだけ願っても夢にも出てきてくれないことを思うと、一瞬でもその姿を、声を確認できたらそれでいいとか思って。
胸がぎゅっと締め付けられて、息も出来ないくらい心臓が早鐘を打って…すぐにあの時のような切なさが胸をいっぱいにする。
