王子様とお姫様








車内にはFMからの洋楽が流れていた。

洋楽を聞きながらごろごろ寝返りを打っていた。

少し動く度に広がる爽やかな香り。




なんて香水だろ…?

男性に抱っこされたときから思ってた。

爽やかなんだけど、甘い香り。

私の好きな香り。


香水の事に夢中になっていた私に男性が声をかける。


「ねぇ、なんて名前?」


あれ…私達、名前も知らなかったんだ。

警戒心なんて全く無い。

むしろ名前を知っていて欲しいし、知りたかった。



「美織…平田美織です」

「美織かぁ。俺、橘陽斗。」


橘…陽斗…。

名前までかっこいい。


やっとドキドキが静まった私と橘さんが初めてちゃんとした会話。

私は一生忘れないだろう。