『ただいまー』

ふんふん

家に入ってからまず匂いを嗅ぐ。

『今日の晩ごはんは…サバの味噌煮か。最悪』

『誰が最悪だってー?』

あ。

母さんがふすまを開けて睨んできた。

『はいはい。サバの味噌煮サイコー。』

いちいちケンカするのも疲れるから、サイコーとだけ言っておく。

『言い方が気に食わないけど…まぁ、いっか』

『母さん、珍しく起きてたんだね。』

『起きてるわよー、毎日ね。』

『嘘ばっかり。いっつも、優太寝かしつけるとき一緒に寝てるくせに』

『仕方ないでしょー。優太、怖がりだからなかなか寝ないのよ』

また、ごまかしてる。

弟の優太のせいにして。

あたしは母さんが嫌いだ。

あたしが小4で優太がまだ2歳のとき、父親に夜逃げされた。

朝起きると、金目のものは全部なくなってた。

父親が夜逃げした原因は母さんの浮気。

母さんが何人もの男と付き合ってるのを

父親が人づてに聞いて、愛想をつかして出ていったらしい。

それからは母さんは1日中パート勤め、

あたしは中学の時は母さんの内職を手伝っていて

高校に上がるとバイトを始めた。

母さんのせいで…青春もくそもない。

と思っている。

人のせいにしなきゃやってられないし。