村に戻った僕は
目の前に広がる光景を見て唖然とした。
生存者などいないのではないか?
と思わせる様な光景。
村中には火の粉が舞っていて、
家は殆ど潰れて・・・
同じ獣がやったとは思いたくない程
事態は悲惨なものだった。
僕も前に自我を失って暴走したとき
一つの村を崩壊させた。
ただ強く、望んでしまったんだ・・・
「人間になりたい」
と。
そんな事を考えていると
不意に後ろから声が聞こえた。
聞き覚えのある
2つの声・・・
振り向くと、
そこには繕桜と守楠の姿があった。
「止めろ主人を返せ!」
守楠の荒い声。
すごい量の人間の血の臭いに混じって
守楠の血の臭いも周囲を漂っていた。
深手を負った守楠に話しかける声を聞いたとたん
僕は硬直してしまった。
それはそう。
朱雀さんの声・・・
「裏切り者の為に村を一つ
この私が壊してやったんだ。
感謝してくれよ?守楠??」
「何のことか??
さっぱり分かんないけど??」
守楠の血の臭いがよりいっそう濃くなった。
僕は耐えられなくなって飛び出した。
「朱雀さん!もう止めて下さい。
関係のない人を巻き添えにしてまで
獣の長であるあなたは何を求めるのです??」
と問いかけた。
「柘榴!?そうかお前も力を欲して
出てきたのだな??」
朱雀は僕に訳の分からない事を言ってきた。
「守楠?早く言えでなければ
この村事この周囲一帯を無にしてしまうぞ?」
朱雀さんが何を欲しがっているのかは
僕には何も分からなかったが、
朱雀さんは本気の様だった。
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