ゆっくりと、月明りで照らされるその場所へと足を進める。


会社員が帰る時間よりも遅いから、今ここには誰もいない。
目撃者は俺だけかもしれない。



静まり返る、ここが更に不気味だった。
だけど、今思えば叫びも、声もあげない俺の方が不気味だっただろう。


足を一歩一歩前へ出すにつれ、その人の姿がはっきりと見えてくる。




その、もう生きていない女の人を見て。


――――――綺麗だと思った。



顔の半分は潰れていて、頭からは血が流れ出る。
見開かれた目。
べっとりと、鮮血がついた真っ黒い髪の毛。
動かない身体。



体が、心が震えた。