「デートの他には?」

「えっとね、ケーキ食べ放題でしょ。
遊園地も行きたいし、プリクラ撮りたいし。
それからそれから…」


藤井さんは指を折りながら、一生懸命話している。
それを見て、俺の顔は緩んで行く。



「随分あるね」

「まあね、死ぬんだったら後悔したくないじゃない?」

「そっか、そうだね」

「でね、でね……?」

「ん?」


もじもじと、両手の人差し指で遊びながら藤井さんは俺をちらちらと見る。


「……?」


首を傾げる俺。
何が言いたいのかさっぱりだ。


「や、やっぱりいい!」

「ええ!?」

「無理、言えない」

「何?何かして欲しいの?」


きゃあきゃあ言う藤井さんは俺の一言でぴたりと固まった。
その姿のまま。



「…笑わない?」

「うん」

「…………絶対?」

「笑うもんか」

「じゃあ、言うよ?
………………………キスしたい」


あああ、言っちゃったと藤井さんはベンチの上で小さく体育座りをして顔を埋めた。
当の俺はと言うと、ポカンとしてしまって。