結局、俺と藤井さんは何も言葉を交わすことなく。
見慣れた駅に降り立った。


「…明日さ」

ふいに藤井さんが話し出す。
サラリーマンがたくさんいて、その声はよく聞き取れない。


「え、何」

「明日、飛び降りがあったマンション前まで来て」

「………え?」


藤井さんの声が聞き取れなかった所為ではない。
意味がわからなかったからだ。


「あの、マンション前にお昼頃来て」

「………」

「待ってるから」

「………」

真剣な顔で言う藤井さんに、俺は問うことなど出来ず…ただ黙ってこくりと頷いた。