* 土方 羚 *
「…な…ん、で?」
そう言った瞬間、目の前の女……結魅が倒れた。
「…おい、大丈夫なのか? …“結魅”」
疾風は、結魅の事をもう名前呼びしてる。
腹の中から込み上げてくる、フツフツとした怒りを抑え、冷静になる。
(…もう、そんな仲なのかよ…。
オレの事、忘れたくせに…)
昔の記憶が一瞬走馬灯のように流れた。
―――――――――――
『…大きくなったらね、お兄ちゃん達と結婚したいなぁー』
『お兄ちゃん達とは、結婚出来ないんだよ、結魅。』
『どうして…?』
『兄妹だからだよ』
『じゃあ結魅、兄妹やめる!!』
―――――――――――
っふ…懐かしいな。
「…んっ」
苦しそうに呻く結魅。
いつの間にか、手に届かないほどの美人になりやがって……。
結局は、兄さんなんかに似てんだよな。
兄達は、イケメンだし…
結魅は、美人だし…?
さすが“美”に厳しい斎藤家。
「…僕が、つれていく…?」
首を傾げ、女みたいな顔立ちの沖田が珍しく身を乗り出してきた。