スネークアイズ

P.M.21:00
新宿:クラブ『REV』

「失礼します、お客様、春香さんをお借りいたします…。春香さん、ご指名です。」

「はい…。すみません、向井さん。すぐ戻って来ますので…ご馳走様でした。」
春香は席を離れ、さっと振り返り一番奥のV.I.Pのテーブルに進んで行く。

常連のようだ。少しだけ微笑んでまた表情が戻る。

「おぅ、春香…久しぶりだな。寂しい思いをさせてすまなかった。ここへ、座りなさい。」

「和田様、お忙しいようですね。お待ちしておりました。」
東京都に7店舗の飲食店を経営する。和田健一という男。

ひと月に2回は、この店を訪れているのだが、しばらく様子を見せていなかったようで…目当ては、言うまでもなく「春香」だ。春香はこの店のNO.1のホステスで、和田がのし上げたと言っても過言ではない。

「お前たちは席を外してくれ…。」
と、自分の部下とヘルプに着いていた女を別の席に向かわせる。

「済まない、少しばかり忙しくて今日はドレスとネックレスしか買ってないが、後でフロントから受け取ってくれ。」

「いつも、ありがとうございます、和田様。ところで、あの東池袋のレストランはどうなりました?」