「あ。」
「あ・・・」

すぐに目が合って、サヨは無言で隣の席を指差した。

座れということだろうか。

示されるまま隣に座る。


「珍しい。ナオが来るの。」

「今はナオキだけどな。」


いつも通りボーッとした瞳。長い三編みを見ると、毎日大変じゃないのだろうかと思ってしまう。


「ぅん?」


それを見ていたのかサヨは首を傾ける。不覚にもその仕草がかわいいと思ってしまった。
それを自覚した時、一気に恥ずかしくなった。


「あっ・・・いや、その・・・髪大変じゃないのか?!」


ああ、これ?とサヨが2本のうちの1つをつまんだ。


「別になれたから。平気だよ。ナオにもしようか?」


どうやら正体がばれてもサヨはオレのことをナオと呼ぶらしい。


「いいよ。遠慮する。これ以上部活のメンバーに変態呼ばわりされたくないし。」

「ふふっ・・・。」


オレの冗談に笑う彼女。


「でもそうだね。私がナオを可愛くしたら、きっとハルカがヤキモチ妬く。」


「??」


「ナオをきれいにするのはハルカの特権だから。」


「へ、へぇ。」


サヨの言いたいことがいまいちわからない。

そんなオレを見てサヨはまた笑う。



「さすが、天然記念物。こりゃー葉月高校のチョウセンアカシジミだね。」

「いや、わけわからん。特に最後の単語が。」



※【チョウセンアカシジミ】とは実際に存在する天然記念物です。



「まぁ、私はハルカもユズも応援してるよー。」


「は?」




彼女はまた笑った。