私は話した。
痣の原因である父。そして父が私を殴る理由。

「…そうか。辛かったな。」

…なんて優しい声。
でも、全部は言えてない。

私が、父に抱かれたこと。

この事を言ったら、"自分が汚い"という事実を改めて感じることになるから。
言いたくない。

「で?お前は俺にどうして欲しい?」

…え?どうして欲しい?
そんな…こと…。

「だ、誰にも言わないでくれれば…。」

バラさないでくれればそれでいい。

「嘘つけ。お前の目はそう言ってねぇぞ。
正直に言ってみろ。
聞いてやるから。」

…っ…。
やめてよ。そんなに優しい声を私に向けないで。

「…先輩。私、汚いんですよ…っ…。」

冷たく突き放してよ。

「私っ…あの男に抱かれたんですよっ…。」

私に優しくしないで欲しい。
もう十分な程に優しくしてもらったから。
もう優しくしないで。
これ以上はもういい。十分だ。

涙が止まらない。
自分で言ったくせに、先輩の反応が怖くて仕方がない。

馬鹿みたい。どうせ皆答えは一緒なのに。

私のどこかで、優しい声を期待している自分がいる。