「…実亜。泣いてんのか?」

「……っ。」

否定しない。…何で泣いてんだ?
また辛いことでも思い出したのか?

「実亜。どうした?」

もう一度聞くと、実亜は振り返り、
俺の方を見て言った。

「大丈夫です。」

………嘘にしか見えなかった。
いつもは完璧な作り笑顔も、今日は下手くそ。

大きな瞳からは、まだ涙が流れている。

「嘘ついてんじゃねぇ。」

「きゃ…。」

《ドサッ》

俺は実亜の腕を掴み、自身の方に引いた。

実亜は俺の伸びている足の上に座る体勢。
少し予想外な距離で、胸が高鳴った。

実亜の頬はほんのりと赤みを差す。
……可愛い反応だな。

「せ、先輩…。近いです…っ。
お、降ろしてください…。」

確かに俺からしても近い。
しかし俺は引き下がらない。

「じゃあ、本当のこと言ってもらおうか。
何で泣いてた?」

「……あ、あくびが少し。」

……無理がある。こいつは本当に首席なのか?