一つだけ、頭に策が浮かぶ。しかしそれを使うのは気が進まなかった。

けれど、こうして考えている今も剣に増すジャンの重みを考えれば、なりふり構っていられなかった。

「なあ親父…これは本気の戦いだよな?」

アンがそう尋ねればジャンは短く、当たり前だと答える。

「そうか…」
「お?どうした?てめぇの本気はまだまだだってか?調子に乗るなよ」
「んなこと一言も言ってねぇだろ」
「じゃあどうした」
「本気の戦いなら…四の五の言ってられねぇなって思っただけだよ」

その言葉に疑問符を浮かべているジャンに対して

「ごめんな親父…マジでごめん!!」

アンは足を蹴り上げる。ジャンの股間をめがけて。

綺麗に股間に決まると、ジャンはその部分を押さえて地面に倒れる。
見ていた衛兵や、団員のメンバーも股間を押さえていた。

その隙にアンは体勢を立て直す。

「てっめ…アン…!」
「この手は使いたくなかったんだけどなぁ…本気の戦いだって言うからさぁ…マジでごめんな親父」
「おっまぇ…これは…この痛み知らねぇからって…」
「本当にごめん」

ジャンは冷や汗を浮かべながらゆっくりと立ち上がる。

「てめぇを負かして…こき使ってやるよアン…!」
「おっかねぇなぁ」