「ジル!どこだジル!」

城を駆け巡り、ついには衛兵達の寄宿舎近くにきた。
ここでジルと他の衛兵がかち合ったら…!

「くそっ」

良くない考えを振り払うかのように、アンは走り続ける。

「ジル!」
「…アン姉ちゃん?」

声の方に目をやれば、目を見開くジルの姿があった。

「やっと…やっと見つけたぁ!」
ジルは涙ぐみながらアンに駆け寄り、飛びつく。

「…ありがとう、探してくれて」
「アン姉ちゃん、アン姉ちゃん…!」
「ごめんな、寂しかったか?」
「うん、うん…!アン姉ちゃん、一緒に帰ろう?皆、国を出るって言ってるんだ。一緒に行こうよ」
「国を出る…?」

アンは驚きを隠せなかった。
自分が囚われている間に、そんなことが決まっていたのか、と。

「うん、だから皆でアン姉ちゃんを迎えに来たんだ」
「…はっ、あのクソ親父…普段はてめぇのミスはてめぇでなんとかしろとか言いやがるくせに…」

アンは固く拳を作る。
非力で、バカで、なのに変な自信があって、守られていることに気づかない自分が腹立たしかった。