見るとそこには、キルトがいた。
アンと、言葉を交わしていた彼だ。

「レベペの息子…だと?」

「…そうだ」

「ふざけんな!俺たちがお前にどれだけ苦労したと…!」

やはり、恨みをもつ人間もいたか。
それもまあ仕方ない、とアンは思う。

自分は盗賊。
恨みを買う仕事だ。

キルトはアンの肩を掴んでこう言った。

「今度、俺と一対一でやってくれ!」

「……へ?」

思わずまぬけな声が出る。

「だってあの金髪坊主だよ!?一戦交えたいと思うさ!」

そう言うキルトの目は輝いていた。どうやら本心らしい。


「い、いけど…」

「よっしゃあ!」

「あ!キルトずりぃぞ!俺も!」

「俺も俺も!」

あちらこちらで手が上がる。

「せっかくあのすばしっこい野郎がいるなら、やってみたいよな!」

誰しもが口を揃えてそう言った。

「よかったなーロイ」

「ここにいて、いいのかな」

思わずそう口に出していた。

「は?いいに決まってんだろ。嫌な顔してる奴がいるか?」

「ううん…いないね」

皆が笑顔だった。
アンもつられて笑顔になる。
その笑顔にカインの胸が高鳴った。

「な…!相手は男だぞ!俺!」

「?」

カインの独り言にアンは首をひねる。

「なあロイ!色んな話聞かせてくれよ!」

「…おう!」

衛兵たちで、宴が始まった。
その宴は、日付が変わるまで続いた。

日付が変わった時…

「鐘が鳴ったぞー!!」

一人がそう叫ぶ。
すると、衛兵たちは立ち上がって武装を始めた。

「鐘…?」

「そうか、ロイは知らないか!」

キルトがアンに、アンの分の武装を渡す。

「鐘が鳴るってことは、侵入者が入ってきたこと!」

「侵入者?…まさか!」

アンは手早く武装を済ませ、いち早く門へと向かう。

まさか、まさか!

門の前では

「さぁて…俺たちの大事な仲間を、娘を、返してもらおうか」

ジャンを先頭にして、レベペ盗賊団が城に乗り込もうとしていた。