「ロイ」

静かに呼ばれた。
その声に振り返ると、そこにはアレンの姿が。

「王子…」

「王子‼なぜここに…」

衛兵達がざわつく。

「ああ、ロイに用事があっただけだから気にしないでください。ロイ、時間」

「時間…?」

「はあ…今日からでしょう、稽古」

「…ああ‼そうでした‼」

アンは手を叩き、アレンの元へ走る。途中カインの方へ向き直り

「カイン、俺抜けるから‼聞いてるよな!?」

「ああ、わかってるよ‼さっさと行け‼」


アンはその返事を聞き、アレンと共にその場を離れた。

「団長、ロイは王子と一体どこへ…?」

一人が恐る恐る尋ねる。全員気になっていたのか、カインに視線が集まった。
対戦していたはずの二人の動きも止まり、カインを見ている。


「ああ、ロイは女王陛下から王子の剣の腕を鍛えてほしいって言われてるんだ。それで今日が、初めての稽古の日」

「王子の剣を鍛える…?」

一斉に騒がしくなる。まあそうだろう。
この国の次期後継者である王子の事を鍛えるなんていうのは、大きな仕事だし名誉なことだ。
それを任された新人…これが意味することは一つしかない。


「ま、ロイはめちゃくちゃ強いってことだな。事実俺も負けたし」

「カイン団長が!?」

更に騒がしくなる。
カインは兵の中で、女王に次いで強い人物であった。


「…あの、カイン団長」

「ん?なんだキルト?」

「…団長とロイ、どこで戦ったんですか?まだロイは兵に入って二日だし…二人が手を合わせてるのを見たことがありません」

「……あ…」

ロイ、ごめん。
カインは心の中でうっかり口を滑らせてしまったことを謝った。