「ちっ、さっきの二対一はわざとだったか」

アンは思わず声に出してしまう。

「カイン団長が二対一を組んだのはお前が初めてだよ、ロイ」

「そうなのか?」

「ああ、普段はあんなことしない。よっぽどお前の事かってるんだろうな‼」

キルトは二カッと笑った。

「かわれててもあまり嬉しくない…」

アンがため息交じりにそうこぼす。

そのアンの横顔をキルトはじっと見つめた。
見つめられていることに気づいたアンは、キルトを少し睨んで

「なんだ」

「あ、いや……どっかで会ったこと無いか?俺達…」

アンの心臓が大きな鼓動を打つ。

そうだ。
なぜ忘れていたのか。自分は衛兵に追われていた身。カイン団の中にも、私を追ったことがある奴はいるはずだ。

「…気のせいだろ」

「いや…確かにどっかで…どこだっけなぁ…」

アンは意識的にキルトから顔を反らす。思い出されたら面倒だ。
思い出さないでくれ、と願いながら、目の前の戦いを眺める。

「うーん…」

キルトは未だに考え続けていた。
アンは自分の心臓の音がうるさいと感じた。それほどまでに緊張していた。