カローレアの金

「うーん、いつも来るお昼時よりは活気がないですね」

市場を眺めて自由に感想を述べる女王。

「もう夕方だしなーこれから活気づくのは酒場だろ」

「酒場…行ったことありません」

「行かんでいい」

アンは行きたい行きたい、と目を輝かせている女王を止めた。
この女王一体いくつだ？アンは時折自分より幼く見える女王の年齢が素直に気になった。

ふと空を見上げると、先ほど庭園で見た鳥の影が真上にある。

市場の商品を見ながら楽しそうにしている女王をそのままにして、指笛を大きく吹いた。

アンの指笛が聞こえたのか、鳥がアンの元に急降下を開始する。


アンの腕に止まった鳥は、やはりジャンの鷹だった。

「ロイ、それは…鷹…ですか？」

女王がアンの元に近づく。


「ああ、親父との連絡用のな。こいつが飛ばされたってことは帰ってこいってことかな」

「……そういえばご家族の方には何も言ってませんでしたね」


女王は口元に手を当てて少し考え込むと、先ほどまで商品を見ていた露店の女店主に何かを頼んだ。

そしてアンの元に戻ってきた女王の手には紙とペン。


「はい、ロイ。これで手紙を書いて報告したらどうですか？」

「手紙…ね。……いいや、それ女王が書いて」

「…いいんですか？」

「書くこと無いし」


アンはそっぽを向いた。
女王は何も言わず、その場で手紙を書き始めた。