身をかがめて扉をくぐると少し広い道に出る。

「ここ…国道か?」

「ええ。城の正面の門から右に、まっすぐ進んで角を曲がるとここに出ます。この道をさらに行くと国境ですね」

女王はマントについた土を払いながら答えた。


「行きましょう」

女王は国境ではなく、城の正面に向かって歩みを進めた。

「え、おい、ばれないのか?」

正面の門には衛兵が二人いたはずだ。


「大丈夫ですよ。私の顔は見えませんし」

女王は更に進んで行く。
アンはため息をつきながらも女王についていった。

しばらく歩いて角を曲がると、城の正面の門が見えた。やはり衛兵が二人いる。


しかし女王は気にしない、といった感じで歩く調子も変わらない。

胆が据わっているのか、ただ単に精神が図太いのか…

アンは苦笑いを浮かべながら、女王とともに衛兵の前を通過する。


衛兵はこちらに注目をしていたが、マントを羽織っているのが自分たちが仕える女王だとは少しも思わなかったようだった。


城の前を通過し、街に向かって歩いていく。

「…本当に気づかないんだな」

「でしょう?私は朝から晩まで政務がぎっしりの、とても多忙な女王ですからね。こんな風に外出しているなんて夢にも思わないんでしょう」

「……政務がぎっしり?」

「ご心配なく、今日の分は半分ほど済ませてあります」

全部じゃないのかよ‼という言葉をのみこんでニコニコ顔の女王と街に出た。