「それを聞いて安心しました。じゃあ行きましょうか、街へ」

「今からか!?」

「ええ。もう夕方…早くしないとお店が閉まってしまいます。それに息抜きがしたいです」

「…そっちが本音だろ……まあいい、行くか」

「あ、じゃあ庭園で待っていてください。すぐに行きますから」

女王はそう言ってどこかに駆けて行った。


「…速っ」

どんどん遠くなっていく女王の背中を見送ったアンは、言われたとおりに庭園へ向かう。


庭園に繋がる大きな扉を開くと、オレンジの光に照らされた美しい花達が目に飛び込んできた。

「…すごいな…」

ふと空を見上げると、一羽の鳥の影が大きな円を描きながら街を見下ろしているのが見えた。


「…あれって、もしかして…」

「ロイ」

振り返るとそこには、茶色いマントを羽織り、フードを目深に被った人物の姿が。

「行きましょうか、街へ」

喜々としたその声から、アンはそれが女王だと気づく。


「こちらへ。抜け道があるのよ」

女王は手慣れてる様子で庭園の奥へと歩みを進めた。


「さすがお忍びの経験値が高いと自称するだけあるな」

「褒めないでください、照れてしまいます」

女王は壁の前で立ち止まり、そこに覆い茂る葉を手でどけた。

そこには小さな扉。

「裏口です。ここから行きましょう」

女王はそう言って扉を開けた。
少し年季が入っているのかギイッと音をたてて扉が開く。