「聞けばあなたはなかなかのすばしっこさ…身軽さ…
先日の格技大会で始めてお見かけしましたが…素晴らしいものですね」
「それはありがとうございます」
「そんなあなたがなぜ捕まったのですか?」
「寝込みを襲われたんですよ。まったく…卑怯ですね、お宅の衛兵は」
「あなたが言えないでしょう?」
「…へえ、なかなか言いますね、女王陛下」
少年はにやりと笑った。
女王は王の広間を見回す。
周りには大臣以外誰もいなかった。
「確か…名はロイ…でしたか?」
アンはにやりと笑った。
なぜなら女王は自分の偽名しか知らない。完全に素性が割れ、把握されてるわけではないとわかったからだった。
「格技大会の時はね。そんなの偽名に決まってる」
「では尋ねましょう、あなたの本当の名は?」
「答えたくない、と言ったら?」
「貴様‼女王陛下の前だぞ‼」
大臣が声を荒げる。
それを女王は手でやめさせた。
「…答えなくなければいいのです。ところであなた…我が兵に加わる気はありませんか?」
「は?」
アンは素っ頓狂な声をあげた。
女王は玉座から立ち上がり、アンの手錠を外す。
「私が勝ったら名前を教えてもらい、兵に入れます。私が負けたらあなたを逃がしましょう。何か宝石もプレゼントして」
「…何で勝負をつける?」
アンは乗り気だった。
女王は大臣の方を向き
「あなたの腰にあるもの、貸していただけるわね?」
手を差し出した。


