「でも、カイン、どっちにしろ剣はもらう」
アンはそう言って剣から飛び、くるりと回転をしながらカインの腰に刺さっている剣を抜いた。
「ちっ」
カインは剣を横に振るが、その剣が切ったのはアンではなく、アンが頭に被っていた布の端だった。その衝撃で、布は地面に落ちる。
「あーよかった、横に振ってくれて。まっすぐ突かれてたら死んでた」
アンは笑いながら、盗った剣を肩に乗せる。
「…金…髪…」
「あの馬鹿…」
観客席から見ていたジャンは頭を抱えた。
「おい、ずらかるぞ。衛兵も気づくだろうからな」
ジャンのその一言で盗賊達は席を立ち、コロシアムを出て行った。
「あら、あの少年…金髪だわ…」
「も、もしや…」
大臣が近くにいる衛兵に確かめる。
「…あ‼やば‼布‼」
アンは自分がしでかしてしまったことにやっと気づく。
「お前、もしかして…」
「捕えろーーー‼‼‼」
女王の近くにいた、先日アンと『鬼ごっこ』をした衛兵が声を上げる。
わらわらを衛兵たちが集まってきて、アンを取り囲む。
アンはちらりと観客席を見て、仲間たちが無事に逃げたのを確認する。


