「なっ…カイン、それは…」

「これは何でもありの大会だろ?気にするな」

カインは腰に刺さっていた剣の内、一方を抜いた。


「やりにくい…」

「お手柔らかにな、ロイ」

「剣を持った奴が手ぶらの奴に言うセリフじゃないだろ、それ…」

カインはそうぼやくアンを無視して先制攻撃に出る。

「お頭、アンの奴死ぬかもな」

「あほか。あんな状況で死ぬんならアンは今までに何百回と死んだことになる」

観客の中に紛れ込み、仕事を終えた盗賊達は一か所に固まり観戦していた。


カインの持っている剣のせいで防戦一方のアンはどうにかこの状況を変えたかった。

その時、アンはカインの腰にもう一本剣が刺さっていることに気づく。


「…それしかないか…」

「さあロイ、どうした?もっとこい‼」

カインが剣を前に突き出した。

アンは地面を強く蹴り、カインの剣の切先に乗る。


「なっ」

観客から歓声が上がった。

「あらまあすごい」

女王も食い入るように見つめていた。

「身軽…だな、ロイ」

「ありがとうな」

アンは剣の上を歩き、カインに近づく。

「まあこの剣を落とさないカインの腕力にも脱帽するよ。ひ弱そうなのに」

「正直、落とさない様にすることでいっぱいいっぱいだ」

「落とせばいいんじゃないのか?」

アンはにやりと笑った。


「ふざけんな。そうしたらお前は落としたこの剣を拾うだろ」

「まあそうするよな」