「ロイ、か…」

カインはその名を頭の中で何度も繰り返し、覚えた。

アンの番号が再び呼ばれ、アンは急いで会場へと戻る。参加者が減ったから戦いの間の時間が狭くなったのだ。


「ロイ…あいつ…かな…、新しく兵に加わるとしたら…」

カインは、国の兵だった。
若くして「カイン団」という自分の団を持てるほどの実力で、その腕は女王をもうならせた。

彼は女王の命令で参加者として大会にもぐりこみ、兵に迎えるべき優秀な人材を探していた。


「二十二番、三番、次だ‼」

進行役のカインの部下が番号を叫ぶ。

二十二番であるカインは足をすすめた。

会場からアンが帰ってくる。

「ロイ、なんでそんな布かぶってるんだ?取ればいいのに…」

カインがアンの頭の布へと手を伸ばす。

「触るな‼」

アンは血相を変えてカインの手を振り払った。

カインはそんなに拒絶されると思ってなかったので驚き、動きが止まる。


しまった‼

アンがそう思った時にはすでに遅かった。
カインはアンのことを疑い出していた。

「悪い悪い、誰でも嫌なことはあるよな」

カインは疑っていることを悟られない様に笑いながら会場へと向かった。

アンはそのカインの笑顔を見てほっと胸を撫でおろした。

カインは会場へと入る寸前に衛兵を一人捕まえた。


「はっ、カイン団ちょ」

そう言いかけた衛兵の口を手でふさぐ。