「何故、当社を志望されたのですか」
中年で白髪混じりの採用担当の男性が、翔子に質問をする。
「御社の商品は、需要があり、特許も取っているとの事ですので、私もそんな活気のある会社で働きたいと思い、志望しました」
何度も何度も履歴書に目を通し、ゆっくり、はきはきと答える翔子。
「貴方は、前の職場では、受発注業務と、、経理の仕事は、小口現金位なんですね。募集は経理事務がメインですが大丈夫ですか?」
履歴書を見ながら確認する採用担当者。
「はい。それほど経験はありませんが、教えて頂ければ頑張ります。」
「そうですか。わかりました。当社でも検討をしたいので、一週間ほどお時間をください。」
「わかりました。宜しくお願い致します。失礼致します。」
いろいろ質問され、商品の説明をされ、手応えはあったような気がする。
何より交通費を貰えた。
翔子の中でのジンクスは、交通費を頂ける会社は、まず採用になる。
今までそうだった。
翔子は心の中でガッツポーズをしながら、家に帰宅した。

彼女は棚倉翔子、21歳。
女子校、短大を経て、20歳で眼鏡関連の会社に就職するものの、理不尽な不当解雇にあい、次に建築関係の会社に就職したが、人間関係でノイローゼ気味になり、一年半で退職。
これが三度目の会社になる。

~次はいい会社だといいなぁ~
両親も最初であんな目にあって以来、口にこそ出さないが、心配をしている。
早く両親を安心させたくて就職活動しているものの、ここ二ヵ月、宙ぶらりんな感じ。
~大丈夫。人間、なんとでもなる。~
そう自分を奮い立たせて、頑張っていた。
そして、それから二日後、あっさり内定を貰い、来週の月曜日から出社することになった。