帰宅してから、母と二人で病院からもらったプリントに目を通しました。


そこには、こう書かれていました。


『脊髄小脳変性症という病気は、運動機能を司る小脳と脊髄が病的に萎縮し、脳が出す指令を体に上手く伝えることが出来なくなる病気。初期は、歩行時のふらつき、めまいなどだが、徐々に歩行困難、摂食困難へとゆっくりと進んで行く進行性の病気である。罹患率はごく少なく、治療法は確立されていない。』


病院で説明されたのと、同じような事が書いてある。

母は、しばらくプリントを見つめると、
「さぁ、お夕飯の準備しなきゃね」
といって、ゆっくりと立ち上がって台所に向かった。

母は、あの時どんな気持ちで、自分の病気について書き連ねてあるプリントを読んだのか……
どんな気持ちで台所に向かったのか…


その時の私には、想像もつきませんでした。