「また少し体調が落ち着いたら、家に帰れるよ」


私は、込み上げてくる悲しみを押さえ込み、笑顔で母にそう言った。


母は、しばらく私の目をじっと見つめると、ふっと目を閉じた。




母の心は今にも折れてしまいそうだった。


私の顔を見る度に、『家に連れて帰って欲しい』と頼んできた。


そのつど、「もう少しだから頑張って」というのが精一杯だった。


きっと母は、それが嘘だと分かっていたと思います。