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伊東たちが新撰組に入隊してから、しばらく経った頃


「…隊士増員は有り難かったが、屯所が手狭になったなぁ」


ぽつりと近藤がこぼした、この一言で事件は起きる―

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「だったら、いっそのこと引っ越しちゃいませんか?」


明るい声音で近藤の隣に座ったのは沖田だ


彼はお茶を近藤の前に置き、お盆を膝に置いた


そんな沖田を目で追いながら、腕組みをしていた土方が口を開く


「引っ越しするという総司の意見に賛成だ…」


「と、歳?」


予想外の返答………


しばらくの沈黙。


近藤と沖田は拍子抜けした表情で、土方を見ている


「……な、なんだ?俺が変なこと言ったってかァ?」


見られていることに照れを感じたのか、土方は頬を赤くした


そして、スズッとお茶を飲み干すと、


「移転先にちょうどいい所があるんだよ…」


独り言のように呟いてから、近藤の部屋をでた


彼の顔にくっつく黒い笑みは、人々を震え上がらせるほど…


まさに、鬼のようだった