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………それにしても遅かった


「碧…」


ぽつりと静かにこだまする自分の声


でも、何度呼ぼうと碧が戻っては来なかった


膳を片付けにいった、などと呑気に考えていたがどうもそうではないらしい


―――様子を見に行こう


そう思い立ち上がったときだった


「…新撰組一番組組長…沖田総司だな?」


カチャリ、と背後で音がする


「これはまた……あなたは上手く忍び込んだつもり、でしょうけど下手ですよ」


寝床に置いていた自分の刀…菊一文字を手にした


久方ぶりに手にした刀は、以前に比べてずしりと重い


――情けない…


自嘲して僕は鞘から刀を抜く


きらりと夜に眩しいその光は、僕にとっては目をつぶりたくなるほどだ


「……動かぬ体でよくぞ戦おうと思えたものだな」


ふん、と鼻で笑われた


まるで僕よりも己が上だと見せつけるように…


「そんなこと誰が分かるんですか?」


「己が労咳とあらば、そう思わざるを得ないだろう…」


――っ!!


次の瞬間


僕は空を斬った

でもそれは…振るうには相容れないほど、苦しかった