僕には友達がいない。
と、いうよりいらないと思っている。
でも周りは僕をいじめる事もなく、学校は嫌いじゃなかった。
そんな時、近所に同い年の女の子が引っ越してきた。
もちろん僕の家にもあいさつに来た。
顔はそこまで派手じゃなくて身長は僕とほとんど同じ。
そこまでタイプという感じではなかった。
近所・・・というよりお隣さんだ。
僕は、この子と仲良くなろうとかそういう事は考えなかった。
「晴人、佳奈ちゃんと学校に行ってあげて。」
「・・・佳奈ちゃんって誰?」
この時は、あの子の名字が北原さんっていう事しかしらなかった。
喋ったこともなかったから・・・。
「・・・。」
と、いう訳でこれから僕は佳奈ちゃんとやらと学校に行く事になった。
とりあえず、チャイを鳴らす。
ピンポーン・・・
すると、お母さんと一緒に一人の女の子が出てきた。
「晴人くんごめんね?じゃ、よろしくおねがいします」
お母さんは深々と頭をさげた。
僕も、いえいえとか言いながら頭をさげた。
「じゃ、いってらっしゃ~い」
お母さんが家の中に入ると、女の子は緊張した感じで、なにも喋らなくなってしまった。
僕も、なんとなく喋りづらかったから無言で歩いていた。
で、結局学校までずっと無言だった。
すると彼女は小さく高い声で
「ありがとう。」
たしかにそう言った。
僕たちは行きも帰りも一緒だった。
なにか会話を交わすこともなかった。でも彼女は学校や家に着き、別れる時に必ず「ありがとう」を小さな声で言った。
僕はそれがなんだか嬉しかった。