津波がすぐそばまで来ているのにも関わらず、何故かトラックが道を塞ぎ、荷台の上に運転手らしき人が乗っていた。

 『早く逃げないと…』

 私はドキドキした。

 すると、警察官が一人、パトカーを降りて走ってトラックに向かった。

 「早く逃げろ!」

 警棒を振りながら、必死に訴えかけている。

 津波は警察官の足に届き始めた。

 その瞬間…TVの画像は海に変わった。

 『あれ?』

 私は、その後どうなったのか知りたくて、しばらくTVのチャンネルを変えられなかった。

 会社の上司や同僚も、顔を見合わせながら言った。

 「多分、波にさらわれたんだね…」

 次々と津波の映像が映し出される。

 ビルの屋上で助けを待っている人達、車の中にいて身動きがとれず、流されてしまってる人…。

 絶対に日本のTVは、『その瞬間』を流さない。

 何故、実際に起きている悲惨な光景を映さないのか理解できない。

 残酷な光景に決まっている。でも、TVに映らない限り実感が湧かない。

 大半が、『大変だよね』と他人事で受け止めている。 

 まるで異次元の世界なのか、映画のワンシーンの様な捉え方だと思う。

 他国のTVでは、当たり前の様に死体が、たくさん転がっているところも映して、現実味のある悲惨さを放映しているのに、日本は絶対にしない。