「あ・あの!

えっ、ちょっと!

ジャケットはどうするんですか!」




「んなのはベンチに置いとけ!

ほら、行くぞ!」




手を差し伸べてくれた彼




「―…あ、」




差し出された手に
私の手を重ねる




―彼の手は温かかった




濁っていた夜空はいつの間にか
また星を照らし出していた。




月明かりに照らされた彼の顔は
息を飲み込むくらい美しかった




だけど、どこか儚げで
消えてしまいそうな人




「あ、お前…名前は?」




「―ハル

…桜木 ハル。」




「ハル、か…

“春”っぽい名前だな!

俺の名前はシュウ

内海 シュウ。

シュウって呼べな?」




―シュウ




私、あなたが居たから
今の私が居ると思うの










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