好きな音。


「奏音くんは?」
「着るみたい」
「ぅはあっ」


口に手を当てて変な声を出す優奈に苦笑い。


「おまたせー」
「しましたな」

突然聞こえた声の方を向くと叶夢くんと未来くん。


両手に持ったトレーにはたくさんのケーキ。


でも、その前に優奈が固まった。


まぁ、わからなくもない。


叶夢くんの格好。

Tシャツに腰に巻いた紺のエプロン。


何でも似合うんだなぁと感心してしまう。


「愛歌ちゃんすごい食べるんだね。未来から聞いて驚いたよ」
「私大食いなの。甘いもの好きだし」
「見えないなぁ。すごい細いのに」
「ハハッ、細くないない」

ふるふる首を振る。

「うたは全国の女子に恨まれる」
「なに?」
「なーんにもっ」
「?」


ボソッと呟いた優奈の声は聞こえなかった。